「自社の仕事に合わせた専用のシステムを作りたい。補助金は使えるのか?」——この質問への答えを、2026年度の各制度の公式公募要領を実際に読んだうえで整理しました。
先に結論を言うと、オーダーメイド開発に使える国の制度は主に2つあります。一方で、有名な「IT導入補助金」は原則使えません。この記事では、使える制度だけでなく「使えないケース」も正直にお伝えします。
結論:使える制度・使えない制度の早見表
| 制度 | オーダーメイド開発 | 戻る割合 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 中小企業省力化投資補助金(一般型) | ◎ ど真ん中の対象 | 1/2〜2/3 | 本命。賃上げ計画が条件 |
| 業務改善助成金 | ◎ 対象 | 3/4〜4/5 | 従業員がいる会社のみ。時給アップとセット。2026年の申請窓は実質9月中の見込み |
| 小規模事業者持続化補助金 | ◯ 一部使える | 上限30万円 | システム開発分の上限が小さい |
| IT導入補助金(現・デジタル化・AI導入補助金) | ✕ 原則対象外 | — | 登録された既製品限定の制度 |
※本記事は2026年8月22日時点の各制度の公募要領・公式資料をもとに作成しています。補助金は締切や内容が変わります。最新情報は各公式サイト、またはお気軽に当社までご確認ください。
本命:中小企業省力化投資補助金(一般型)
人手不足を設備やシステムで補う中小企業を国が支援する制度です。オーダーメイドのシステム開発を考えている会社にとって、2026年度で最も相性のよい制度です。
オーダーメイド開発が対象である根拠
この制度の一般型は、カタログから既製品を選ぶ方式(カタログ注文型)とは別に、一品一様で設計されたシステムを個別審査する方式として設計されています。公募要領には、対象として次のような記載があります。
「外部のSIerとの連携などを通じて事業者の個々の業務に応じて専用で設計されたシステム」出典:中小企業省力化投資補助金〈一般型〉 公募要領(第8回)
つまり「御社の業務に合わせて専用に作るシステム」は、対象外どころか制度が想定している真ん中のケースです。開発会社側の事前登録も不要なため、どの開発会社に発注しても使えます。
いくら戻るか(100万円のシステムの例)
補助率は中小企業で1/2(賃上げの特例で2/3)、小規模事業者なら2/3です。上限額は従業員5人以下の会社でも750万円まであるので、中小企業の業務システムならまず収まります。
例えば100万円のシステムなら、補助率1/2で採択された場合は国から50万円が補助され、実質負担は約50万円。小規模事業者や賃上げ特例で2/3が適用されれば実質約33万円まで下がります。補助の上限が大きいため、「補助金で安く済ませる」よりも「同じ実質負担で、より大きな仕組みを作る」使い方に向いた制度です。
条件:賃上げ計画とセット
この制度には大事な条件があります。従業員の給与総額を年3.5%以上引き上げる計画を作り、従業員に表明することです。達成できない場合は補助金の返還ルールもあります。「浮いた時間と利益を給料に回す」という国の設計思想なので、賃上げに前向きな会社ほど使いやすい制度です。
スケジュールと、知っておくべき時間軸
第8回の公募は2026年8月18日にすでに始まっています。申請受付(ポータル)は9月中旬開始、申請締切は10月中旬、採択発表は2027年2月上旬(いずれも予定)。事業実施期間は交付決定から17ヶ月以内です。
正直にお伝えしたいのは時間軸です。過去の回では締切から採択発表まで約3ヶ月かかっています(第4回:2025年11月27日締切→2026年3月6日発表、第5回:2026年2月27日締切→6月5日発表)。発注・契約ができるのは交付決定の後なので、いま申請すると開発の着手は2027年春ごろになります。また補助金は後払い(精算払い)のため、導入費はいったん全額お支払いいただき、実績報告のあとに補助金が振り込まれます。「急いで導入したい」場合には向かない制度です。
従業員がいる会社なら:業務改善助成金
厚生労働省の制度で、事業場内の最低賃金(会社で一番低い時給)を引き上げた会社の設備投資を助成します。対象経費には「顧客・在庫・帳票管理システムの導入による業務効率化」が明記されており、見積書・請求書・報告管理のようなシステムはまさに対象です。
- 助成率:事業場内最低賃金が1,050円未満の職場は4/5、1,050円以上は3/4。ただし地域別最低賃金がすでに1,050円を超えている都道府県(大阪府・兵庫県など)では、時給1,050円未満の雇用は最低賃金法上ありえないため、実質的に3/4です
- コース:時給の引き上げ額により50円・70円・90円の3コース。上限額は「コース×引き上げる人数」で決まります(例:50円コース・1人なら30〜40万円、90円コース・1人なら90〜100万円、最大600万円)。導入費の大半をカバーするには90円コースまたは複数人の引き上げが必要です
- 申請期間:2026年9月1日から、「その都道府県の地域別最低賃金の発効日の前日」または「11月30日」のいずれか早い日まで。多くの地域で10月ごろに新しい最低賃金が発効するため、実質的な申請の窓は9月中の約1ヶ月になる見込みです(大阪府・兵庫県は2026年10月1日発効の見込み。※答申段階のため最終確定は労働局の公示をご確認ください)
注意点は2つ。従業員(パート含む)がいない会社は使えません(社長おひとり・ご家族だけの会社は対象外)。また、引き上げた時給は元に戻せないため、恒久的な人件費増とセットであることは踏まえておく必要があります。
補完として:小規模事業者持続化補助金
従業員20人以下(商業・サービス業は5人以下)の小規模事業者向けの定番制度です。ただし正直にお伝えすると、システム開発は「ウェブサイト関連費」という区分になり、この区分だけで上限30万円(税込)という制約があります。開発費の規模にかかわらず、システム開発分で戻るのは最大30万円です。
第20回の申請受付は2026年11月5日〜12月15日。申請には商工会議所・商工会が発行する書類(様式4)が必要で、その発行締切は12月4日です。単体では戻りが小さいため、上の2制度が合わない場合の補完として考えるのが現実的です。
IT導入補助金は使えないの?
システム導入の補助金として一番有名なのはIT導入補助金(2026年度から「デジタル化・AI導入補助金」に名称変更)ですが、この制度は事前に登録されたパッケージ製品・クラウドサービス限定の設計で、オーダーメイド開発は原則対象外です。
公式資料の原文を含めた詳しい確認結果は、別記事にまとめました:IT導入補助金でオーダーメイド開発は対象外?【2026年度・公式資料で確認】
正直に言うと、補助金が使えないケース
どの記事もあまり書きませんが、補助金に向かないケースもあります。無理に使おうとすると、かえって手間と失望が増えます。
- 従業員がいない:業務改善助成金は対象外。省力化投資補助金も賃上げ要件との兼ね合いで個別確認が必要です
- 賃上げの予定がない:主力2制度はどちらも賃上げが条件のため、残るは持続化補助金(上限30万円)だけになります
- 今すぐ導入したい:補助金は「申請→審査→交付決定→発注」の順番が原則。数ヶ月待てない場合は補助金なしの導入が現実的です
オーダーメイド開発ならではの申請の壁:相見積もり
意外と知られていない実務の壁があります。補助金の多くは、価格の妥当性を示すために複数社からの見積もり(相見積もり)を求めます。業務改善助成金は原則2社以上、持続化補助金も発注額が税込50万円を超える場合は2社以上の見積もりが必要です(省力化投資補助金の扱いは公募要領の最新版でご確認ください)。
ところがオーダーメイド開発は会社ごとに要件が違うため、同じ条件の見積もりを複数社から取りにくいのが実情です。対処としては、要件を整理した簡単な資料(何を・どこまで自動化したいか)を先に作り、それを複数社に渡して見積もりを依頼するのが定石です。当社では、この要件整理の段階からお手伝いしています。
申請の流れと、一番多い失敗
流れはどの制度も大きくは同じです:申請 → 審査 → 交付決定(OK) → 契約・発注 → 導入 → 実績報告。
そして一番多い失敗が、交付決定の前に契約・発注してしまうことです。原則として、OKが出る前に発注した費用は補助の対象外=全額自己負担になります。「早く欲しいから先に頼んでおこう」が一番危険です。
もうひとつ大事な点として、補助金は後払い(精算払い)です。導入費はいったん全額をお支払いいただき、事業完了後の実績報告を経て補助金が振り込まれます。資金繰りはこの前提で計画してください。
よくある質問
Q. 必ずもらえますか?
いいえ。どの制度も審査があり、採択されない場合もあります。「通れば実質負担がこれだけ下がる」という前提で検討するのが健全です。
Q. 申請の手続きは大変ですか?
制度により差はありますが、事業計画や見積もりなどの書類準備は必要です。持続化補助金は商工会議所の窓口サポートを受けられます。なお、業務改善助成金の申請書の作成・提出を代行できるのは社会保険労務士だけと法律で決まっているため、開発会社が申請を代行することはできません。当社がお手伝いするのは、工数削減の数字・見積書・計画の下書きといった「材料」の整理までです。
Q. 大阪・近畿の自治体独自の補助金はありますか?
2026年8月時点では、近畿の主要な自治体独自のIT導入系補助金は募集終了・未募集が大半でした(例:姫路市の産業デジタル化補助金は募集終了)。自治体の制度は年度途中で突然始まり突然締め切られるため、最新状況は都度の確認が必要です。
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会社の状況(従業員数・作りたい仕組み・時期・ご予算感)が分かれば、どの制度が使えそうか、実質負担がいくらになりそうかを整理してお答えします。お急ぎの場合は、補助金を使わずすぐ着手できる導入プランもご提案します。制度が使えない場合は、使えないと正直にお伝えします。
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